更新日:2025年12月7日 –
「奨学金…もし返せなくなったらどうしよう…」
「大学に行きたい気持ちと、お金の不安が消えない…」
「返済を“待ってもらえる”制度が本当にあるの?」
返済が苦しいとき、あなたを守る制度があります
日本学生支援機構「返還猶予制度」をわかりやすく解説
はじめに|「奨学金=一生苦しむ」という不安を抱えていませんか?
高校3年生、受験生、大学生の皆さん。
大学進学を考える中で、こんな不安を感じたことはありませんか?
「奨学金って、結局借金だよね…」
「もし就職できなかったら返せないんじゃない?」
「払えなくなったら人生詰むのでは…?」
実際、私のもとに相談に来られる方の中にも、
“奨学金の返済が怖くて、進学そのものを諦めようとした”
という方は少なくありません。
ですが、まず知ってほしいことがあります。
奨学金には、返済が苦しいときに“守ってくれる制度”がきちんと用意されています。
それが、今回解説する
**日本学生支援機構の「返還猶予制度」**です。
この記事では、公認心理師の立場から、
- 返還猶予制度とは何か
- どんなときに使えるのか
- 使うと不利になるのか
- 心理的にどんな安心が得られるのか
を、できるだけわかりやすく解説していきます。
1.返還猶予制度とは?|「一定期間、返済を止められる制度」
返還猶予制度とは、簡単に言えば
**「奨学金の返済が難しい事情があるときに、一定期間、返済を一時的に止められる制度」**です。
すでに奨学金を借りている人だけでなく、
これから奨学金を利用しようとしている人にとっても、
“将来の安全装置”として必ず知っておいてほしい制度です。
ポイントは以下の3つです。
- 最長15年まで返済を止められる
- 事情があれば何度でも申請できる
- 延滞・ブラックリストとはまったく別の「正規の制度」
「返せなくなったら終わり」ではなく、
**「返せない時期は待ってもらえる」**という仕組みなのです。
2.どんな理由なら利用できるの?
返還猶予制度は、「返済が単に面倒だから」という理由では利用できませんが、
人生で誰にでも起こりうる事情であれば、利用できる可能性があります。
主な理由は以下のとおりです。
- 収入が少ない(低所得)
- 失業・非正規雇用
- 病気・ケガ・メンタル不調
- 妊娠・出産・育児
- 家族の介護
- 災害による生活困難
つまり、
「自分のせいではなく、どうしても今は返せない」
という状況に対して、制度としてきちんと配慮されているのです。
心理的にも、「失敗した人が使う制度」ではなく、
**「人生の波を前提に用意されている制度」**だと捉えることが大切です。
3.どのくらい返済を止められるの?
返還猶予は、原則として
1年ごとに申請し、最大で15年間まで延長可能です。
たとえば、
- 卒業後に就職できず、数年アルバイト生活が続いた
- 病気で働けない時期があった
- 出産・育児で収入が大きく減った
こうした期間、その都度申請すれば、
返済を止めたまま生活の立て直しに集中できます。
「1回申請したら終わり」ではなく、
必要な期間だけ何度も使える制度だという点は、非常に大きな安心材料です。
4.利息はどうなるの?|第一種と第二種の違い
ここも多くの人が不安に思うポイントです。
- 第一種奨学金(無利子)
→ 返還猶予中も利息は一切つきません。 - 第二種奨学金(有利子)
→ 返還猶予中は、本来予定されていた利息が一部調整されます。
「止めている間にどんどん雪だるま式に増える」ということはありません。
つまり、
返還猶予を使ったからといって、極端に不利になるわけではありません。
「怖くて申請できない」ことで、
延滞や信用情報への影響のほうが大きなリスクになる場合もあります。
5.返還猶予と「延滞」はまったく違います
ここはとても大事な点です。
- 返還猶予 → 正規の制度。信用情報に不利な影響はありません。
- 延滞 → 返済義務を怠っている状態。信用情報に記録が残るリスクがあります。
返済が苦しいときに
「どうしよう、連絡するのが怖い…」
と何もしないまま延滞してしまう人も少なくありません。
ですが、心理的に恐さはあっても、
**正しい行動は“逃げること”ではなく、“制度を使うこと”**です。
返還猶予制度は、
「困ったら相談してもいい」「待ってもらっていい」
という前提で作られています。
6.心理的に見る「返還猶予制度」の本当の役割
公認心理師としてお伝えしたいのは、
返還猶予制度はお金の制度であると同時に、心を守る制度でもあるということです。
返済が始まると、
- 「払わなきゃ」というプレッシャー
- 将来への不安
- 自己否定感
- 親への罪悪感
などが重なり、強いストレスになるケースがあります。
特に、
「自分はダメだから返せない」
「頑張れない自分が悪い」
と、自分を責めてしまう方も非常に多いです。
しかし、返還猶予制度の前提は
“返済が難しくなるのは誰にでも起こりうる”
という考え方です。
制度を使うことは、
甘えでも、逃げでも、失敗でもありません。
**人生を立て直すための「正当な選択」**なのです。
7.これから奨学金を考える人へ伝えたいこと
これから奨学金の利用を検討している高校生・受験生の皆さんに、
どうしても伝えたいことがあります。
奨学金を借りることは、
あなたの努力や可能性を否定するものではありません。
そして、もし将来、
「今は返せない…」という時期が来たとしても、
あなたには今回紹介したような支える制度があります。
未来は、思い通りにいかないこともあります。
就職がうまくいかないことも、病気になることも、立ち止まることもあります。
でも、そのたびに人生が“詰む”わけではありません。
制度は、あなたが立ち上がる時間を待ってくれます。
まとめ|「返せなくなったら終わり」ではありません
日本学生支援機構の返還猶予制度は、
- 返済が苦しいときに
- 最大15年間
- 正規の手続きで
- 信用情報に悪影響を与えず
- 人生の立て直しを待ってもらえる
非常に重要なセーフティネットです。
奨学金を借りるかどうか迷うあなたへ。
「返せなくなったら終わり」と思わなくて大丈夫です。
「返せない時期には、守ってくれる制度がある」
その事実だけでも、どうか覚えておいてください。
あなたが安心して自分の未来を選べることを、心から願っています。
この記事を書いた人
桜庭ひまり(公認心理師)
進路・将来・奨学金やお金の不安など、10〜20代のこころの悩みに寄り添う心理コラムを執筆。