更新日:2025年12月7日 –
「奨学金って、利息がすごく高いって聞いたけど本当…?」
「将来、借りた金額の倍とか返さないといけないの?」
「大学には行きたい。でも“借金”って考えると怖い…」
奨学金の“利息の正体”、正しく知っていますか?
不安の多くは「知らないこと」から生まれます。
はじめに|「利息が怖いから奨学金は使わない」は本当に正解?
奨学金を検討している多くの高校生・受験生・大学生から、こんな声をよく聞きます。
「奨学金って、利息がすごく高いんですよね?」
「借りた金額の倍くらい返すことになるって聞きました」
「親に“借金はやめておけ”と言われて不安です」
“利息=怖いもの”“奨学金=危険な借金”
そんなイメージだけが先行して、進学や進路そのものを諦めてしまう人も少なくありません。
ですが、公認心理師として多くの相談を受ける中で感じるのは、
利息に対する不安の多くは「正確な情報を知らないこと」から生まれているということです。
この記事では、
- 奨学金の利息は本当に高いのか
- どこが「落とし穴」なのか
- 不安になりやすい心理ポイント
- 借りる前に必ず確認すべきこと
を、できるだけわかりやすく解説していきます。
1.まず知っておきたい「利息がつく奨学金・つかない奨学金」
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、大きく分けて2種類があります。
● 第一種奨学金(無利子)
・利息は一切つきません
・借りた金額そのままを返します
・成績・家計基準はやや厳しめ
● 第二種奨学金(有利子)
・利息がつきます
・第一種よりも借りられる金額が多い
・家計基準は比較的ゆるやか
まず大切なのは、
**「すべての奨学金に利息がつくわけではない」**という点です。
「奨学金=必ず高い利息がつく」と思い込んでいる人は、ここで一度イメージを修正しておきましょう。
2.第二種奨学金の利息はどのくらい?
では、実際に「利息がつく」第二種奨学金の利率はどのくらいなのでしょうか。
結論から言えば、
一般的な消費者金融やカードローンと比べると、かなり低い水準です。
第二種奨学金の利率は、上限でも 年3.0% と決められています。
多くの場合、実際の利率は 年0.1〜1%台 に収まることがほとんどです。
例えば、
- 月5万円 × 4年間 借りた場合 → 総額 約240万円
- 利率1%前後の場合 → 利息総額は数十万円程度
「数十万円」と聞くと大きく感じるかもしれませんが、
20年程度かけて返済する中で分散されていくため、
“いきなり何百万円も増える”というものではありません。
3.それでも「高く感じてしまう」心理的な理由
それでも多くの人が、奨学金の利息を「とても高い」と感じてしまいます。
これには心理的な理由があります。
① 「借金」という言葉の持つ恐怖イメージ
人は「借金」「利息」「返済」といった言葉に、強い不安や罪悪感を結びつけやすい傾向があります。
実際の金額よりも、言葉のイメージだけで不安が膨らむのです。
② 将来が見えない不安
高校生や大学生の段階では、「自分が将来どれくらい稼げるか」が想像できません。
見えないものに対して、人は必要以上に不安を感じやすくなります。
③ 「払い続ける」ことへのストレス
人は「長期間、義務が続く」ことに対して強いストレスを感じます。
そのため、利息そのものよりも
“ずっと返し続ける感覚”そのものが怖くなるのです。
4.実はここが落とし穴①|「利息」より怖いのは「延滞」
奨学金で本当に注意すべきなのは、
利息そのものよりも「延滞(返済が遅れること)」です。
返済が遅れたまま放置すると、
- 延滞金が発生する
- 信用情報に記録が残る可能性がある
- クレジットカードやローンが組めなくなる
など、将来の生活に影響が出ることもあります。
ですが、ここで大事なのは、
**「返済が苦しいときに使える制度がきちんと用意されている」**という点です。
返還猶予制度・減額返還制度などを利用すれば、
返済を一時的に止めたり、月々の負担を軽くしたりできます。
「怖いから何もしない」が一番の落とし穴なのです。
5.実はここが落とし穴②|「借りすぎ」に気づきにくい
もう一つの落とし穴は、
学生のうちは“借りている感覚”が薄れやすいという点です。
毎月決まった額が振り込まれるため、
- 生活に余裕があるように感じる
- 本来不要な支出も増えやすい
- 卒業時に「こんなに借りていたの?」と驚く
というケースも少なくありません。
奨学金は「もらっているお金」ではなく、
将来の自分が返すお金です。
借りる前に、
「月いくら必要か」「本当にその金額が必要か」
を一度冷静に考えることが、将来の負担を減らします。
6.心理士の立場から伝えたい「奨学金と不安」の関係
奨学金について悩む人の多くは、
「親に迷惑をかけたくない」
「将来つまずいたらどうしよう」
「自分の選択が正しいのかわからない」
といった、**“お金そのもの”よりも“将来への不安”**を強く抱えています。
不安が強いと、人は
「一番悪いケース」だけを想像してしまいます。
- 返せなくなったらどうしよう
- 人生が終わるのでは
- 家族に迷惑をかけるのでは
しかし実際には、返済が苦しいときには返還猶予や減額といった制度があり、
「一度つまずいたら終わり」という仕組みにはなっていません。
不安を感じること自体は、決して悪いことではありません。
それだけあなたが、自分の将来を真剣に考えている証拠でもあります。
大切なのは、
不安を“想像”だけで大きくしないこと
そして、正しい情報で不安を小さくしていくことです。
7.借りる前に必ず確認しておきたい5つのポイント
奨学金を検討するときは、次の5つを必ず確認しておきましょう。
1.第一種(無利子)か第二種(有利子)か
2.毎月いくら返す予定になるのか
3.返済はいつから始まるのか
4.返済が苦しくなったときに使える制度があること
5.総額でいくら借りることになるのか
この5つを事前に把握しておくだけで、
「よくわからない不安」は大きく減ります。
まとめ|利息は「怖いもの」ではなく「正しく知るもの」
奨学金の利息について、もう一度整理します。
- 無利子の奨学金もある
- 有利子でも利率は比較的低い
- 本当に注意すべきは「延滞」と「借りすぎ」
- 返済が苦しいときには守ってくれる制度がある
奨学金は、
あなたの「学びたい」「進みたい」という気持ちを支えるための制度です。
確かに、借りたお金は将来返す必要があります。
でもそれは、「夢への投資」を後から少しずつ返していく、という形でもあります。
どうか、
“怖いイメージだけ”で可能性を閉ざさないでください。
正しい知識を持ったうえで、自分にとって一番納得のいく選択をしてほしいと、心から願っています。
この記事を書いた人
桜庭ひまり(公認心理師)
進路・将来・奨学金やお金の不安など、10〜20代のこころの悩みに寄り添う心理コラムを執筆。