更新日:2025年12月7日 –
― 知らないと不安が増える「滞納の現実」と、今からできる対策 ―
「もし奨学金が返せなくなったら、人生終わりなの…?」
「親に迷惑がかかるって本当?」
「ブラックリストに載るって聞いて怖くなった…」
「まだ学生だけど、将来が不安で仕方ない」
こうした不安を、ひとりで抱え込んでいませんか?
奨学金は多くの学生にとって大切な学費の支えですが、同時に「将来の負担」でもあります。特に最近は、物価高や就職環境の変化などもあり、「ちゃんと返せるか分からない」と不安を感じる人が増えています。
この記事では、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を前提に,
「もし返せなくなったら何が起こるのか」
「本当にブラックリストに載るのか」
「救済制度はあるのか」
を、公認心理師の視点も交えながら、できるだけわかりやすく解説します。
① まず知っておいてほしい結論
奨学金が返せなくなっても、
すぐに人生が終わるわけでも、すべてを失うわけでもありません。
ただし――
何もしないまま放置すると、状況は確実に悪化します。
大切なのは、
「返せなくなりそうだ」と気づいた**“できるだけ早い段階で行動すること”**です。
② 奨学金を「返せない」状態とは?
JASSOの奨学金では、以下のような状態を指します。
- 返済日を過ぎても入金がない
- 数か月にわたって支払いが止まる
この状態を 「延滞(えんたい)」または「滞納(たいのう)」 と呼びます。
最初の1か月の延滞では、大きな問題になることは少ないですが、これが続くと段階的にさまざまな影響が出てきます。
③ 返済できなかったときの具体的な流れ
1. 最初は「確認の連絡」が来る
支払いができなかった場合、最初は
- 郵送
- 電話
などでやさしい確認連絡が届きます。
この時点で多くの人が
「怖くて無視してしまう」
「後で払おうと思って放置する」
ことで、状況が悪化してしまいます。
2. 延滞が続くと「信用情報」に登録される
数か月以上にわたって返済が滞ると、いわゆる
**「ブラックリスト(信用情報機関)」**に登録される可能性があります。
そうなると次のような影響が出ることがあります。
- クレジットカードが作れない
- スマホの分割払いができない
- ローンが組めない
これは将来の生活設計にも大きく影響します。
3. それでも支払わないと「法的手続き」へ
さらに長期間返済が行われない場合、
- 保証人への請求
- 内容証明郵便の送付
- 給与や口座の「差押え」
といった法的手続きに進む可能性もあります。
4. 親や保証人にも影響が及ぶ
JASSO奨学金では、ほとんどの場合「保証人」が設定されています。
- 親
- 親族
- 機関保証会社
などです。
本人が返済できなくなると、保証人に請求がいく仕組みになっています。
そのため、本人だけでなく家族関係にも大きなストレスがかかることになります。
5. 公認心理師として見てきた「返済不安」の現実
私は公認心理師として、これまでに多くの「奨学金返済に悩む方」の相談を受けてきました。
その中で非常に多いのが、次のような声です。
- 「お金の不安で常に頭がいっぱい」
- 「将来のことを考えると動悸がする」
- 「親に申し訳なくて苦しい」
- 「自分はダメな人間だと思ってしまう」
奨学金の問題は、お金の問題であると同時に、自己肯定感や人生の選択に深く影響する“心の問題”でもあります。
不安が強くなると、
- 相談できなくなる
- 判断が遅れる
- 問題を直視できなくなる
という悪循環に入りやすくなります。
6. 返せなくなりそうなときに使える「救済制度」
① 返還猶予制度
失業・収入減少・病気など、やむを得ない事情がある場合、
一定期間、返済を一時的に止める制度です。
- 利息の支払いも一時停止
- 最大10年まで申請可能
② 減額返還制度
毎月の返済額を 2分の1〜3分の1に減額 して返済できる制度です。
- その分、返済期間は延びる
- 生活の立て直しがしやすい
③ 繰上返還(余裕がある場合)
一方で、就職後など収入に余裕が出た場合は、
繰上返還によって将来の利息負担を減らす ことも可能です。
7. 「返せないかもしれない」と感じた時点でやるべきこと
最も大切なのは、
「返せなくなってから動く」のではなく、「返せないかもしれない」と感じた時点で行動することです。
具体的には、
- 返済額と現在の収入を正確に把握する
- JASSOに必ず連絡する
- 返還猶予・減額返還を検討する
- 家族や信頼できる人に状況を共有する
これだけで、状況は大きく変わります。
8. 高校生・受験生・大学生の今だからこそ知ってほしいこと
これから奨学金を利用する皆さんに、ぜひ知っておいてほしいのは、
- 奨学金は「借金」であること
- でも「人生を壊すもの」ではないこと
- 正しい知識があれば、リスクは大きく下げられること
という事実です。
怖いのは、「奨学金」そのものよりも、
**「知らないまま背負うこと」「相談できないこと」**です。
まとめ
奨学金が返せなくなった場合、
- 延滞 → 信用情報への影響 → 法的手続き
- 保証人への請求
- 精神的な大きなストレス
といった現実があります。
しかし同時に、
- 返還猶予制度
- 減額返還制度
- JASSOへの相談窓口
など、守ってくれる仕組みも確実に存在します。
大切なのは、
「ひとりで抱え込まないこと」
「早めに、正しい情報を知ること」
それだけで、未来は大きく変わります。
この記事を書いた人
桜庭ひまり(公認心理師)
進路・将来・奨学金やお金の不安など、10〜20代のこころの悩みに寄り添う心理コラムを執筆。
「返せなくなったらどうしよう」と感じた方は、まず日本学生支援機構の「返還猶予制度」について正しく知っておくことが大切です。具体的な条件や申請方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
→ 日本学生支援機構の返還猶予制度を心理士がわかりやすく解説
奨学金の仕組みや第一種・第二種の違い、利息の考え方など、制度全体を知りたい方はこちらの記事もあわせて参考にしてください。
→ 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を公認心理師がやさしく解説
「実際にどれくらい返済額が増えるの?」と気になる方は、奨学金の利息の仕組みと注意点をまとめたこちらの記事もおすすめです。
→ 奨学金の利息って高い?借りる前に知っておきたい落とし穴